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漆業界の抱える問題。「まれ」から見る漆職人と私たちにできること

漁業、農業、伝統工芸産業・・・一般企業でさえも若者の人手不足は深刻な問題であり、漆業界でもその問題は例外なく降り注いでいます。今回は特に、なぜ漆職人は人手不足に悩まされるのでしょうか?という事をお話ししていきます。

その大きな原因の一つに「儲からない」という事があります。例えば現役で活躍されている漆職人の方に弟子入りをするとします。その期間は見習い扱いになりますし、一般企業に入社することとは違い、月給10万円を切ることも珍しくないほど給与も低く、安定した金額が出るわけではありません。クレジットカードおすすめの審査にも通ることが難しくなる可能性すらあり得ます。

修業期間は今日では4年間で終わるそうです。とはいえ4年で覚えられるのはたった1つの仕事のみ。漆器の製作工程のお話はしましたよね、木地挽きから始まり下塗、中塗・・・などなど、1つの漆器を作る上で必要な「8職」と言われる作業内容をすべて修行するとなると、およそ32年かかる計算になりますね。

また、修業期間を終えても安定して高給が貰える事が約束されるわけではないので、その人たちが第一線で活躍し、今度は弟子を雇う側になっても高い給料で雇うことはできずに、結果的に負の連鎖になってしまうのです。

2015年の上半期にNHKの連続テレビ小説「まれ」という作品が放送されました。この作品は能登と横浜を舞台とし、ヒロイン兼物語の主役である津村 稀(つむら まれ)や漆職人を目指す紺谷 圭太(こんたに けいた)、その他幼馴染達、彼女らの家族がおりなす「自らの夢」について考えるお話です。

圭太は能登で輪島塗の漆職人を目指す若者で、おじいちゃんが4代目を務める実家に弟子入りをし、輪島塗の現状を知り、修業する一方で洋菓子店と漆器のコラボレーションなどで輪島塗を多くの人に知ってもらうべく東奔西走します。作中で圭太の人間性を通じて職人の大変さが伝わってくる良い作品です。

また、のちの展開で稀が圭太と結婚するにあたり、稀は夢であり、やっと手にしたパティシエ稼業を辞めて、紺谷の家に入って専業主婦となり圭太を職人として支えることを選択する場面がありました。漆職人は本人だけでなく家族の協力があってこそ成り立つという考え方があったそうです。それほど気難しい職業なのですね。

このように現実でもドラマを通じてでも漆器職人の大変さ、家族の苦労はうかがい知ることができますが、何もどんどん暗い話になるわけではありません。「まれ」では圭太と稀は新しい漆職人のライフワークを確立しましたし、現実では漆職人を後援する体制も整えているのです。

例で言えば「会津漆器技術後継者訓練校」です。これは以前紹介した会津漆器を受け継ぐ人のために開かれた専門学校ですよね、先ほど申し上げました通り弟子入りは志願者にも雇用者にも結構な負担になることです。なので、専門学校という形で会津漆器を残すための門戸を広げたわけなのです。

漆業界は確かに後継者不足で先細りしているのかもしれません。日本の伝統工芸に認定しているのですから、本当は国がより力を入れて支援してくださるのが一番良いのですが、現実問題なかなか難しいものです。

若者の間では「安いものを買い、使えなくなったら捨てて別の安いもので代替する」という考えが主流になっているので、「高くても自分に合う良いものを買い、長く使えるように大切に扱う」という考えが薄れてきているのも漆業界にとっては厳しい向かい風になっています。

私たちに一番身近にできることは、お気に入りの漆器を見つけて生産者と長く付き合いを持つことであると、私は考えます。

漆は人を繋ぎ、人に継がれる。私たちと共に生ける器

これまでたくさんの漆についての知識をご紹介させていただきました。文字数の関係上なかなかお伝えしたいことをすべてお伝えすることはできなかったり、字足らずで誤解を与えてしまった点も見受けられるかもしれませんが、ご容赦いただけると嬉しく思います。

私がこの記事を書くに至った理由は一番初めに申し上げた通りに、漆に携わる仕事をしようとしている友人に触発されたことがきっかけでした。

その友人は父親が輪島塗の蒔絵師で、その父の背中を見て育ったからでしょうか、現在東京で社会人になった本人も、ゆくゆくは輪島塗の職人として地元に戻り、生まれ育った地に貢献したいと思うようになったそうです。

私はその話を聞いたとき、その友人の有り方に強く憧れました。明確な目標があるということにも、その目標が美しい形をしていることにも、私の羨望の的になるには十分すぎるほど素晴らしいものでした。

そうして私は友人の見ている世界に少しでも近づくために、今までなんとなく美しいものだと思っていた程度の工芸品について、そして漆について、この機会をお借りして本格的に調べることを決意し、こうしてご紹介させていただきました。そのことについて、お付き合い頂き誠にありがとうございました。

こうして記事を書かせていただくうえで振り返ってみると、日本の代表的な産業であるのにもかかわらず、漆についてほとんど知らないことだらけだったのだと改めて思い知ることができました。

漆器を作るためには木地挽き、下塗り、中塗り、上塗り、蒔絵、沈金・・・幾重にもなる作業工程にそれぞれ専門家が存在して分業制が取られているという事、漆器と言えば輪島塗くらいのイメージしかなかった私は日本4大漆器など日本にある漆器の産地の多さに驚きました。

それでも中国産の漆が増えている漆器業界ですが、その事を憂うことないほど、今なお国産漆器の人気の根深さに驚きと安心を隠せませんでした。

漆器も職人によって名前や種類が多数存在するのも、手作りならではの良さですよね。そういえば、今更になってしまいましたが「漆」の語源は「麗し」「潤し」とも言われているそうです。漆器はその麗しさゆえに何気ない私たちの生活に潤いを与えてくれるものとして、その語源に見劣りしない素晴らしいものでしたね。

最終的に私がみなさまにお伝えしたいことは、最初に申し上げたことと変わりありません。この記事を読んでくださった皆様が、読む前より漆のことを少しだけ好きになってくれていれば、それだけでもこの記事に価値は生まれることでしょう。

もう少し欲を言えば、実際に漆の産地に足を運び、工芸品の匂いを肌で感じてみたいという思いで実際に行動してくださったのならば、それは誠に重畳なことであると思います。

日本はかつて漆産業に従事していたのではありません。今も日本だけにとどまらず、世界で漆器は生きています。そんな漆器のことをどこかで思ってくださる皆様に、今後の一層のご活躍をお祈りいたします。改めまして、拝読いただき誠にありがとうございました。

実際に触れてこそ工芸の世界。体験して知ろう漆の世界!

いよいよラスト2回になってまいりました。いままで厳選した漆の知識をご紹介してきましたが、少しでも「なるほど」という気持ちを持っていただけたでしょうか?ラストスパートである本日は、プロの方と一緒に漆に実際に触れあえる、つまり体験教室をご紹介したいと思います!

こうして記事を書いている身で申し上げるのも恐縮ですが、やはり実際に自分で漆を触ってプロの方から直接お話を聞ける環境というのは、学ぶうえで大切にしていきたいものですよね。

ということで、ここからは都内でも体験できる教室をご紹介します。・・・というのも、実は筆者が都内に在住しており、工芸品と縁遠い環境であることから、どうしても都内で漆器を購入できる場所や体験できる場所を求めて紹介してしまっている節もわずかながら存在してしまいます。

なので、都内の方は自分もここでなら体験できる!という同じ目線で、その他の地域の方々は何卒、漆器のごとく優しく温かくお見守りください。

まずご紹介したい体験教室は、小島ゆりさんが開催する漆塗り教室です。小島ゆりさんは島根県松江市にお生まれの松江藩御抱え塗師の蒔絵師十二代目 漆壺斎継承者です。父である十一代目から教えを受けながらも東京大学で美術史を学び、東京芸術大学の聴講生としても日々邁進してまいりました。

小島ゆりさんは「漆文化再構築業」というものを進行しており、「作る人を増やす・買う人を増やす・関わる人を増やす」という事業戦略の元で漆産業に関わっており、体験教室のコンセプトは「うるしの初めの一歩を応援する」というものになっています。これから漆に関わりたい人にとって、またとない環境ですね。

彼女は「初心者向けうるし塗り教室」というものを開いており、東急都立大学駅前やJR大森駅など様々な場所で「拭き漆」「金継ぎ」「螺鈿」「蒔絵」「刷毛塗り」の教室を4~10回の受講回数で開催しております。

中でもオススメしたいのは「1日うるし塗りワークショップ」というものです。教室体験というのはなかなか何回も受講しないといけないと思うと気が重くなってしまうものですよね。

ですが、この「1日うるし塗りワークショップ」では1日3,500円ほどで気軽に参加できるので、とりあえず体験してみたい!とお考えの方はこのワークショップはとてもオススメできます!

そしてもう一軒紹介したい教室は、「播与漆工芸教室」です。こちらは月に決められた回数の参加になる教室ですが月に3回の教室なので、そこまで気後れしない習い事になると思われます。

複数の講師陣で運営される教室なのですが、その多くが東京藝術大学の学部卒や院卒生で構成されており、蒔絵担当、金継ぎ担当などの専門性に富んだ先生から、漆全般に対応してくれる先生など、様々なプロたちと触れ合えるのが魅力的です。

生徒の作品を見てもわかるように、「カリキュラムはありません」という事がこれから参加しようとしている生徒に非常に優しい教室なのだということを教えてくれます。漆の本格的な技術が学びたい方から、何か趣味を見つけたくて迷っている人まで、一度この教室の門を叩いてみるのはいかがでしょうか?

本日は2軒の教室を紹介させていただきました。どちらにも共通することですが、漆工芸の教室に参加してみたいと思われたのならば「まずは相談してみる」というのはいかがでしょうか?漆に触れる前に、まずは人と人とのふれあいに積極的になってみましょう。

自宅でもできる漆工芸職人の技、漆の特性を生かした技術『金継ぎ』

今回は漆の技術のご紹介です。「金継ぎ」という言葉はご存知でしょうか?「金継ぎ」とは、漆の特性である接着能力を生かして破損した漆を修繕する漆塗りの技法です。単なる修理というわけではなく、修理後の破片の継ぎ目を「景色」と称して、修理前とはまた違った趣を見出す楽しみ方ができます。

修繕前にいかに近づけるかというのではなく、あえて修理した後であることを誇張して味に変えてしまうことは日本人独自の感性ですよね。金継ぎの歴史の発端は室町時代まで遡ると言われています。室町時代と言えば前にこの記事でも紹介しましたよね、茶の湯の時代がキーワードになってきます。

茶の湯の時代が全盛期であったころ、茶の湯は富裕層や権力者の娯楽であり、茶器というものはそのような人々にとっても非常に高価で大切なものとして扱われていました。その茶器が壊れてしまうという事は、現代における意味とは全く異なるほど大きな意味を成していたことでしょう。

なので、高価で大切な茶器が壊れてしまったとしても、新たに趣を見出す方向へ成長を遂げた結果、「金継ぎ」という素晴らしい技術が生まれたのですね。さて、そのような技術が現代まで受け継がれており、かつ私たちにも習得できるということで、「金継ぎ」とはどのような手順で行うのでしょうか?

実は金継ぎは通常5STEPほどで完了してしまうほど手軽に行うことができる作業なのです。まぎれもなく職人の技術でありながら自宅でも実践できる金継ぎの、各STEPをわかりやすくまとめてみました。割れたティーカップを想像しながら一緒に追ってみましょう!

STEP1⇒まずは割れた漆器の破片をすべて集めて断面以外をマスキングテープで保護しましょう。破片を集められるだけ集めておくと仕上がりも変わってきます!

STEP2⇒接着剤となる漆を断面に塗布します。漆はそのまま使用するのではなく、小麦粉を漆と水で練って接着剤としての漆を作っておきます。

STEP3⇒接着にはみ出た漆を削り取ったら、刻苧漆(こくそうるし)を用いて欠けた部分や隙間を修復します。漏れを防ぐためには不可欠な作業なので丁寧に行いましょう。

STEP4⇒サンドペーパーで刻苧漆の塗布箇所を整えたら、乾いた後に継ぎ目の上から再び接着用の漆を塗りましょう。仕上げの見栄えを良くするために弁柄漆を用いると良いでしょう。

STEP5⇒漆の塗布箇所に金粉を蒔いて仕上げの蒔絵をしましょう。この時、金・銀・白金の金属粉を蒔いて仕上げに磨けば完成です。白金を用いて行った金継ぎを特に「白金継ぎ」と呼ぶそうです。

ある程度の簡略化された作業工程ですが、大まかな流れは以上の通りです。お気に入りのティーカップなどを修復できるだけではなく、金継ぎをしたことでオンリーワンのカップになり、さらに思い出に残る1品になること間違いなしです!

このように金継ぎは自宅でも出来、今の時代では材料もホームセンターですべてそろえることができます。しかし注意してほしいことは、前にも言った通りに、生の漆を用いる作業では、かぶれの心配を忘れてはいけないという事です!

もしご自宅でお気に入りのカップやお皿を割ってしまった方がいたら、この記事のことを思い出していただいて、生の漆の取り扱いに十分注意していただいたうえで、大切な食器をさらに魅力的なものへ変えていただきたいです。

生活に溶け込んでこそ漆。本格的漆器のお求め方法をご紹介します!

漆についての知識を学び、どのような製品があるのか主要な部分は抑えた・・・となれば次は実際にお店に行ったり、購入する意欲が湧いてきたのではないでしょうか?今回の記事では漆を購入するのならばどういったお店が良いのか、ご紹介します!

まずは実際に産地を訪れた場合です。日本4大漆器編では、漆器の流派のご紹介と併せて漆会館をご紹介したことは覚えていらっしゃいますか?和歌山県ならば紀州漆器の「うるわし館」福井県の「うるしの里会館」では職人さんの仕事を間近で見たり、実際にお話を伺うことができましたね。

そのようなたくさんのメリットがあることから、原産地にせっかく赴いたのならば、資料や展示を眺めることもでき、さらにその中で気に入ったものを購入できる、漆会館をご利用されることをオススメします。

ですが現実問題、なかなか漆の産地に訪れるというのは難しいですよね。大都市付近で購入できれば問題ないのですが、有名漆器の出張店舗は実は都内にも多くは存在しません。

以前の記事で紹介に上がった「輪島キリモト」さんは日本橋の三越に出張店舗を出しているそうですが、それでも輪島塗のお店で有名なのはそこだけと言ってもいいほど限られてしまいます。お店を出すのにも一苦労かかってしまうのです。

なので、現在ではインターネット通販での漆器の取引が多くなっています。実はインターネットを活用すると一気に漆器購入の選択の幅が広がります「輪島キリモト」さんもオンラインショップを展開していますし、「ICHIZA」というオンラインショップでは工芸品を手広く扱っています。

「うるわしうるし 【漆器の島安】」は日本最大級の漆器販売オンラインショップで、国産漆で仕上げた漆器が比較的リーズナブルなお値段でお買い求めできることが有名です!

一番良いのは産地に直接赴き購入すること、そのほかに漆器展などの展覧会に行き物販コーナーで購入することですが、そういったことはその時の状況によって左右されてしまうので、気に入ったものがあれば只今紹介したオンラインショップを利用するなどして、ぜひとも手に入れてください。

無事に漆器をお求めいただいた方のために、兼ねてお手入れ方法をご紹介しましょう!漆は頑丈ではありますが、たわしなどで洗浄してしまうとさすがに傷がついてしまうので、柔らかいスポンジで洗うようにしましょう。

また、木製製品ですので、長時間水に漬け置きしておくのは好ましくないですよね。柔らかいスポンジで洗った後はさっと布で水分を拭き取って早々に乾燥させてしまいましょう。

お手入れに当たり、神経質になりすぎる必要はございませんが、ほかの製品と一緒にして食洗機にかけることだけはやめておきましょう。少し面倒かもしれませんが、漆器だけは手洗いしてあげることで、ぐんと長持ちになりますよ!

洗い終わったら直射日光は避けて食器棚にしまっておきましょう、漆は落下の衝撃にも非常に強い素材ですが、紫外線には弱いですからね。

以上、お求めいただく方法のご紹介とお手入れについて、でした!今回の記事をまとめますと、原産地に赴くことが難しく漆会館をご利用できない方は、ご近所で漆器の展示会や物産展の情報をこまめにチェックして訪れるほか、オンラインショップのご利用も視野に入れていただく、ということでお願いいたします!

その美しさは見る者に感銘を与える、インテリアにも最適な漆製品

漆塗りの製品は何も食器等の食生活の面のみでの日用品だけに留まりません。家具や小物、雑貨などのインテリア製品にも伝統の漆塗り技術が用いられています。今回はどのような家具、雑貨等の漆塗り製品があるのか、ご紹介していきます!

本日も前回と同様、「輪島キリモト」さんの商品の中からご紹介いたします。ここでは「このような種類の商品があり、輪島キリモトさんではこのようなデザインである」という商品のご紹介になりますのでご注意ください。それでは行ってみましょう!

「フォトスタンド」「置時計」・・・改めて説明するまでもないほどご存知のアイテムですね。フォトスタンドは少し工夫がなされていて、傾斜を持たせた木の板にあしらわれた突起の上の写真を載せ、その上にガラス盤をかぶせるといったようなシンプルかつ魅力的なデザインになっています。

「名刺入れ」・・・木製の名刺入れなんて珍しいですよね!蒔地技法で傷がつきにくくなるよう仕上げられており、デザイン強度共に洗練されたものである漆塗りの名刺入れは、ビジネスシーンにもふさわしい逸品に仕上がっています。

「ペントレー」・・・日常のなにげない小物入れとしても利用することができ、想像以上に活用できる品です。少し角度がついているので消しゴムなどを分けて収納することもできます。輪島キリモトさんでは拭き漆で仕上げたボールペンも販売しているので、併せて木のぬくもりを感じることのできる文房具セットとしてもオススメです!

他にも「アテハコ」「蓋付きティッシュケース」など、日常生活に木のぬくもりをあたえてくれる日用雑貨のラインナップがございます。それでは次は家具についてのご紹介です。輪島キリモトさんではテーブルを多く扱っているみたいですよ!

「ネストテーブル」・・・ネストテーブルとは一般的に大中小3つのテーブルが1セットになっており、それぞれが入れ子式(ネスト)になっている組み込み式のテーブルのことです。傷つきにくく軽いこのテーブルはベッドやソファの横に置くサイドテーブルにも最適です。

「ちゃぶ台」・・・桐のテーブルは使い勝手が良いものの傷つきやすい一面も持ち合わせています。しかし漆塗りで仕上げることにより、傷つきにくく耐久性にも富んだ逸品に仕上がった輪島キリモト製のちゃぶ台は、軽くて持ち運びにも便利な実用性のとんだちゃぶ台に仕上がりました。

どのインテリアもシックな仕上がりになっており、古臭い感じをさせずに現代のハウスモデルにも違和感なくマッチする逸品に仕上がっているのではないでしょうか?輪島キリモトさんにはこのように多彩なインテリアや雑貨がございます。

輪島キリモトさんではないのですが、ほかにもご紹介したい漆塗りの製品があります。それは漆塗りで仕上げられた昔ながらの木製のおもちゃです。「けん玉」「竹とんぼ」「独楽」など様々な漆塗りのおもちゃがあります。

昔は水鉄砲や万華鏡など竹や和紙、そういった自然由来の素材でできた玩具がたくさんありました。かつて遊んだあのおもちゃを大人になって購入すると、色々な思い出が蘇ってきて、また時間を忘れて遊んでしまうかもしれませんね。

そんなこんなで本日のご紹介もおしまいでございます。2回に渡ってご紹介させていただいた「輪島キリモト」さんの商品は、私ではまだまだ紹介しきれていないものが多数ございます。興味を持っていただけたのならば、ぜひお店に足を運んでいただけると嬉しく思います。

日用品にも用いられる漆塗りの製品。和の生活を楽しみましょう!

漆製品は様々な種類の商品が存在いたします。今までは漆の知識をたくさん学んできたので、ここで漆製品にはどのようなものがあるのか、一緒に見ていきましょう!

漆製品のメリットとして、耐久、保温力があったのは覚えていらっしゃいますか?漆製品は木製製品ならではのメリットで、非常に料理と相性が良いのであらゆる種類の食器が作られています。

漆器に代表される製品として「椀」がございます。ですが、実はひとえに椀と言っても、椀にもたくさんの種類があります。これからご紹介する「椀」の内、みなさまは何種類ほどご存知でしょうか?

漆器の形にはそれぞれのお店のこだわりが反映されているので、職人さんの数だけお椀の種類があるほど多岐に渡ります。なので、本日は「輪島キリモト」さんを参考に「椀」の種類をご紹介いたします。では早速見ていきましょう!

「飯椀」・・・これは一般的な「おわん」とも言われる、最もスタンダードな白飯を盛り付けるお椀です。これと併せてお味噌汁など汁物を入れるスタンダードなお椀である「千すじ汁椀」を合わせて朝食に並べたいですね。

「すぎ椀」・・・なだらかな曲線が特徴のお椀です。逆さにするとてっぺんが杉の木に似ていることからこの名前が付けられました。大きいものは汁物やどんぶり、中くらいのものは飯椀など、大きさに分けて様々な使い方ができるのが魅力のお椀です!

「端反椀(はぞりわん)」・・・器の上部にかけて適度にくびれており、上縁が少し外に沿っているのが特徴のお椀です。上縁が沿っていることで汁物を飲むときに優しい口当たりになるので、お味噌汁やお吸い物を入れるのにオススメのお椀です。

「いそ椀」・・・鍋やあら汁など、磯物を中心とした料理に使用して欲しいという思いから「いそ椀」と名付けられたそうです。浅いながらも口が広いこの椀にはブリ大根や金目鯛の煮つけなどの煮物、お正月にはお雑煮など具材が華やかな料理を盛り付けるのに適しています!

「高台三ツ椀(こうだいみつわん)」・・・しっかりとした高台がついているのが特徴的で、大中小の3点セットでご利用いただけるお椀です。ちなみに、高台とはお椀のそこについている丸い土台部分です。同じく3点セットのお椀には、より底が深い器である小福椀(こふくわん)があります。

いかがだったでしょうか?今回は5種類のお椀の種類をピックアップしてご紹介いたしましたが、「輪島キリモト」さんには、ほかにも多様な漆器の日用品がございます。そしてご用意している漆器はお椀だけではございません。

平皿の形をした使いやすい3点セットの「小福皿」や漆塗りの「コーヒーカップ」までございます。漆塗りのコーヒーカップの利点は、熱を通しにくいので熱くて持てないということがなく、またアイスコーヒーの場合でも水滴を発生させず、机を濡らす心配もありません。

お酒が好きな方にとっては輪島塗の「ぐいのみ」を使えば、いつもの日本酒がさらにおいしく感じるかもしれませんよ!同じくお酒を入れる「片口」はお酒だけではなく、調味料や、そのまま片口に料理を盛り付けるなど様々な用途に用いることができます!

このように漆器の日用品はたくさんの種類があり、みなさまの日常生活をより豊かにしてくれるでしょう。実際にお店を訪れることで、たくさんの漆器を見ていただき、用途や好みによってお好きなものに巡り合えると良いですね!

茶の湯の文化と共に生きる京漆器、室町からの歴史を辿る

今回は茶道と漆器の親密な関係を取り持つ「京漆器」についてご紹介させていただきます。少し日本4大漆器編のような側面を持ち合わせている回ですが、この後2回に渡って紹介する記事のプロローグのような回にしたいと思います。

まず、漆器と言えば思い浮かぶのは食器であり、親密な関係にあたるのは漆器に盛り付ける料理、つまり漆器は生活や食と密接な関係にあると言えます。そのような中で「京漆器」はお茶を取り扱う茶道と共にその歴史を重ねてきました。

京漆器は794年以降にその流派が確立されました。室町時代に起こった茶の湯文化の繁栄と共に現在まで成長を続けています。木地は他の漆器に比べてとても薄く、入念な下地の上に豪華な蒔絵が施される京漆器は、茶の湯の精神である「わび・さび」を彷彿とさせますね。

繊細かつ堅牢な京漆器はこのように茶道との相性がよく、茶筒や急須など様々な茶道具に漆器が用いられました。中でも「棗(なつめ)」は千利休が用いたことで始まった究極の茶器呼ばれ、茶道を支える重要な役割を担う漆器でした。

以降、京漆器は躍進を続け、デザインや技法などを洗練した結果、今日では高級漆器の位置を確立しました。茶道具だけに留まらず、食器、調度品、家具など様々な製品を漆製品に変えていったのです。

こうしてお茶から始まり、京都の方々や私たちの生活により身近になったのが京漆器です。お茶に始まり現代の高級品の扱いを受ける京漆器は、私たちの見る京都の写し鏡のようです。

漆器と茶道にはこのような関係性で結ばれていました。我々の生活に京漆器という形で「わび・さび」をもたらしてくれていることは日本人としては嬉しい限りです。

ココで久しぶりに漆についての豆知識をご紹介いたします。実はお茶を飲む習慣や生成する方法は平安時代に遣唐使から伝承されました。当時の中国茶は現代の烏龍茶に似ている微発酵茶であったと考えられており、日本人の言う茶色とはこの烏龍茶に近い色から名付けられたといわれています。

色と関連しているのですが、日本人が名付けた色の中には漆という言葉が入る「漆黒」という色が存在しますよね。黒よりも黒々しく光沢のある漆のような色を想像できるかと思いますが、この言葉は面白いことに、漆における性質を表す非常によくできた言葉であるとも取れます。

一番初めの漆のご説明を覚えていらっしゃいますか?生の漆は茶色いペンキのようだ、という話をしたのですが、実はとれたての漆は黒というよりは茶色の液体なのです!その茶色い漆を精製する段階で、鉄分を混ぜることによって、鉄の酸化作用に乗じて漆も黒く着色されるのです。

この特有の色合いは他の方法で出すことはできず、漆独自の黒い色であるという意味合いからも「漆黒」という言葉が当てはまり、非常によくできていて面白い言葉なのですね!

以上、豆知識も含め茶道と京漆器における関係性から人々と漆器の付き合い方を見てまいりました。最終的に何が申し上げたいかというと、「漆器は常に人と共にある」という事です、人の生活に馴染むためにはさまざまな用途の漆器が開発されましたからね!

なので、今回は少し日常と離れた風情のある内容でしたが、「漆器と人の生活」についてを「漆器と茶道」という形でご紹介しました。今度は我々により密接である日用品としての漆器にはどのようなものがあるのか、というお話をさせていただきたいと思います。次回は「生活に寄り添う漆」をお楽しみに!

漆にかぶれは付物なのか、漆の気になるデメリットを解析!

これまでたくさんの漆器や漆製品の魅力についてご紹介させていただきました。やっぱり漆器のある生活というのは人の心までも豊かにすると思います。ですがお目が高い皆様のことですから、漆には「かぶれ」というデメリットの面で問題が存在することを十分理解されていると思います。

「かぶれ」というものはそもそもなんなのでしょうか。簡単に言うとアレルギー反応のようなものです。「かぶれ」は漆に含まれるウルシオールという物質が、皮膚に触れることで体内に侵入し、発生する症状です。

体内に侵入したウルシオールはタンパク質の結合を断ち切る悪さをするので、追い出さなくてはいけません。追い出すために体内の免疫が過剰に頑張ってしまい、結果「かぶれ」という症状として肌に皮膚炎が現れてしまうのです。

初めて漆に触る人はほぼ確実にかぶれるといわれますが、漆の「かぶれ」の症状は人それぞれで一概には申し上げられません。初めはウルシオールの侵入箇所のみの症状で、最悪の場合全身かぶれてしまうこともあるそうです。

このように「かぶれ」てしまうと非常に恐ろしい漆ですが、ほとんどの場合心配することはありません。というのも、この症状は生の漆に触れる機会がある方に通ずる話であって、完全に固化した漆器の完成品に触れたところでかぶれる可能性はまずないからです。

世の中に言われている漆のかぶれ問題は、ほとんどが生の漆を触る職人さんや、登山家などのウルシノキの生息地に足を踏み入れることのある方々側の問題であり、皆様が心配することはないでしょう。

ただし、作品に漆を取り入れたい美大生や自分で楽器や器に再塗装をするために生の漆を使う必要がある人は、上記のかぶれについて少し頭に入れておいて下さい。かぶれてから皮膚科に駆け込んでも、症状を抑える薬は今のところ存在しないそうなので。

それでも漆を使いたい方には、現在では「かぶれにくい漆」というものが市販されているそうなので、もしも生の漆で工作をしたい方がいらっしゃるのならば、こちらの購入をオススメいたします。

「かぶれにくい漆」の詳しい原理についてはわかりませんが、こちらの漆はたんぱく加水分解物が添加されているという事で、私の考えでは「かぶれにくい漆」は先ほど申し上げたウルシオールが体内に入り分解すべきタンパク質を先に添加することで、体内で悪さする力を削いでいるのかな、などと考えます。

いずれにせよかぶれる心配が拭えないうちは生の漆を扱うことは避けたほうがよさそうです。職人さんは漆に耐性を付けるために生の漆をなめたりするそうですが、これは重度のかぶれを引き起こすことで耐性を付ける荒療治だそうなので、決して真似はなさらないようお願いいたします。

ここでひとつ、漆についての豆知識を少しご教授いたします。実は漆を扱う上で気を付けなければいけないことがあります。・・・それは紫外線に気を付けて取り扱わなければいけないということです!直射日光のあたる場所で放置しすぎると耐久性・耐熱性などに問題が出てきて、塗り直しをしなくてはいけなくなってしまいます。

生の漆は市販されているだけに、かぶれのことを知らなければ塗り直そうとして自分で生の漆を触ってしまうとこでしたね!なので、塗り直しを防ぐためにも保存・使用の際には直射日光を避け、紫外線から守ってあげるようにしてください!

以上、今回は漆のかぶれについてご紹介させていただきました。最後にもう一度だけ「製品としての漆器ならばまずかぶれません」という事を添えて終わらせていただきます。

漆に新たな活用法を見出しましょう。実は食べてもおいしいんです!

前回は一度基本的なことに立ち返って漆の魅力・メリットについてご紹介させていただきました。本日も少し復習的な側面を持ちつつ、ご紹介したいのは「漆の活用方法について」のお話しでございます。皆様はいくつの活用法をご存知でしょうか?さっそくいってみましょう!

漆は塗料になる!・・・というのは今までさんざんやってきましたし、漆器のことをご存知の皆様に今更申し上げる話でもありませんね。ちなみに、塗料としての漆は椀や橋、盆だけでなく、楽器の塗装にも使われます。

オカリナからエレキギター、太鼓まで様々な木製楽器の最後の仕上げとして漆が用いられています。「拭き漆」や「摺り漆」をすることによって、塗膜が薄く仕上がり、音の響きが格段に良くなるそうです。

厚く塗ることで耐久・耐熱性が上がって喜ばれる漆器と、漆を薄く塗ることでより良い音が鳴らせると好まれる楽器。同じ器なのに塗料としてまったく別の側面を持ち合わせるなんて、とても面白いですね!

そして漆は塗料としてだけではなく、接着剤としても活用されます。沈金の説明の時にも少し触れましたね。沈金は、沈金ノミという道具で器の表面に模様を彫っていき、その後に蒔く金粉を接着させるために漆を流し込む、という形で漆を接着剤として活用しました。

漆職人の方によると、しばしば「漆をはじめに見つけたのは、人間ではなく蜂だ」という話を聞きます。蜂の巣と言えば小さな蜂の割にかなり大きな巣を作りますよね。その中に蜂が暮らすわけなのですが、いくら小さいとはいえ相当な重さになることでしょう。

その蜂の巣の根本の黒い部分(木と蜂の巣を繋げる部分)に漆を用いることで、重い巣と木や軒下などの土台を強力に接着するのです。蜂は私たちより早くに漆の魅力に気づいていたのですね。

実は塗料としての漆、接着剤としての漆の他にも漆の活用法があるのですが、ご存知でしょうか?それは食べることができる、つまり食事に活用できるということです!それは漆職人がかぶれに対する耐性をつけるために漆の新芽を食べ始めたことから始まります。

漆の新芽はえぐみが少ないので、味噌汁やてんぷらで食べるとタラの芽に似ているそうで、おいしいとのことです。ですが人によっては舌がピリピリしたなどの報告もあるので、漆にかぶれたことのある人や、少しでも心配のある方は控えたほうがよさそうです。

更に、漆の実は食用だけでなく、かつては蝋燭の制作にも使われたそうなのです。漆の実には蝋分という蝋燭に必要な成分を含まれており、それを絞り出すことで蝋燭や鬢付け油を作ることができるのです。

鬢付け油はあまり聞き覚えのない言葉かもしれませんが、髪を結う際に用いるいわば整髪料であり、漆は漆器の見た目だけでなく我々の見た目を整えるためにも一役買ってくれていたわけですね!

こうしてみると、漆には塗るだけじゃなくさまざまな使用方法がありました。中でもてんぷらやお味噌汁にして食べられること、蝋燭や鬢付け油が作れることなんかは私も知らなかったのでとても驚きました。

調理できるということは、漆器に盛り付けた漆が食べられるという事で少し不思議な感じがしますが、漆のおいしい調理方法が出てくるのが楽しみですね。

また、今回のお話をするうえで「漆は食べたりしてかぶれは大丈夫なの?」と少し思ったりしました。それにしても、少し不思議ではありませんか?漆はよくかぶれると言いますが、なぜかぶれるのでしょうか?・・・また漆についての新しい発見が生まれそうな予感を残しながら、今回はここら辺でおしまいです!

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