ついに漆器を作る3工程のうち、最後の工程であり、漆器の花形「加飾」のご紹介でございます。加飾には大きく分けて「沈金(ちんきん)」と「蒔絵(まきえ)」の2種類があります。それぞれ加飾の手法が異なるものなので、順番に見ていきましょう。
まず「沈金」についての説明です。これはどのように加飾するかと申しますと、上塗り(もしくは呂色まで)が終わった器に「沈金ノミ」というノミで漆器に模様を彫っていきます。これは小学校のころに図画工作で行った彫刻刀の作業のようですね。
次に掘った場所に、改めて漆をひいていきます。掘るだけでなく、漆を流し込む必要があるのですね!実はその理由として、漆が接着剤の効果を持つことにあります。つまり接着効果のある漆を模様の箇所に流し込むことで、その後に入れる「金箔」を器に接着することができるのです!
こうすることで、器を布で磨いたときに金箔がしっかりと器に残り、美しい模様を表現することができるようになります。この工程を見た先人達は漆黒の漆に輝く金箔が沈んでいるように見えるという事から、この技術を「沈金」と名付けたそうです!
私には彫刻刀の授業は難しかった記憶があります。ですが沈金により描かれた模様は、掘っているとはいえ漆を流し込み、磨くことで決して凹凸ができるわけでは無く、掘って作ったようには見えないほど繊細で、筆で描かれていたと間違うほど緻密に見えるものなのです。
現在では金箔や金粉といった金色の配色だけでなく様々な色のついた粉が用いられることから、視覚にも楽しく、表現の奥深さが更に広がっていますね!
そして表現の奥深さならもう一方の「蒔絵」も忘れてはいけませんよね。ここからは「蒔絵」のお話をさせていただきたいと思います。
蒔絵は沈金とは違い、掘ることはしません。上塗り、呂色が済んだ器の上から漆で模様を描き、それが乾く前に金粉や銀粉を蒔き付ける加飾方法です。蒔絵は普通の絵のように器に描く手法なのですね。
この記事をお読みの方に絵を描く方はいらっしゃいますでしょうか?絵を描く方はたくさんいるだけに、様々な手法や自己流の描き方が存在します。それと同じで蒔絵にもたくさんの種類の技法がございます。
その中でもっとも基本的な技法である「平蒔絵(ひらまきえ)」をご紹介したいと思います。「平蒔絵」には「消し蒔絵(けしまきえ)」「磨き蒔絵(みがきまきえ)」がございます。
「消し蒔絵」では、できる限り薄く描いた漆の模様に「消し金粉」と呼ばれる金箔の中で最もと言えるほど非常に細かくした金箔を粉筒、もしくは綿で塗りつけていきます。蒔いた場所がはっきりとわかるので、非常に繊細かつ緻密な作業が要求されます。
「磨き蒔絵」では「消し金粉」より荒い粒の金箔を用いります。その他の工程は「消し蒔絵」とあまり変わりませんが、「磨き蒔絵」では金箔を蒔いた後でさらに磨き作業をすることで「消し蒔絵」よりさらに光沢のある蒔絵になります。
インターネットなどで一見してもわかりづらいので、機会がある方は是非お店で手に取ってその違いを感じていただくことをオススメいたします!
以上が漆器制作における花形、「沈金」と「蒔絵」のご紹介でした!この工程は絵を描くことに似ているので、語るのが非常に難しい分野ですが、それだけに実際の製品では奥深く魅力的なものがたくさんあるので、ぜひ蒔絵が施された漆器をたくさん見ていただきたいです!
さて、これで漆器の成り立ちがわかっていただけたでしょうか?次からは、そんな制作工程でも特にこだわりを持ち、有名になった漆器の流派についてお話しさせていただきたいと思います!