漆業界の抱える問題。「まれ」から見る漆職人と私たちにできること

漁業、農業、伝統工芸産業・・・一般企業でさえも若者の人手不足は深刻な問題であり、漆業界でもその問題は例外なく降り注いでいます。今回は特に、なぜ漆職人は人手不足に悩まされるのでしょうか?という事をお話ししていきます。

その大きな原因の一つに「儲からない」という事があります。例えば現役で活躍されている漆職人の方に弟子入りをするとします。その期間は見習い扱いになりますし、一般企業に入社することとは違い、月給10万円を切ることも珍しくないほど給与も低く、安定した金額が出るわけではありません。

修業期間は今日では4年間で終わるそうです。とはいえ4年で覚えられるのはたった1つの仕事のみ。漆器の製作工程のお話はしましたよね、木地挽きから始まり下塗、中塗・・・などなど、1つの漆器を作る上で必要な「8職」と言われる作業内容をすべて修行するとなると、およそ32年かかる計算になりますね。

また、修業期間を終えても安定して高給が貰える事が約束されるわけではないので、その人たちが第一線で活躍し、今度は弟子を雇う側になっても高い給料で雇うことはできずに、結果的に負の連鎖になってしまうのです。

2015年の上半期にNHKの連続テレビ小説「まれ」という作品が放送されました。この作品は能登と横浜を舞台とし、ヒロイン兼物語の主役である津村 稀(つむら まれ)や漆職人を目指す紺谷 圭太(こんたに けいた)、その他幼馴染達、彼女らの家族がおりなす「自らの夢」について考えるお話です。

圭太は能登で輪島塗の漆職人を目指す若者で、おじいちゃんが4代目を務める実家に弟子入りをし、輪島塗の現状を知り、修業する一方で洋菓子店と漆器のコラボレーションなどで輪島塗を多くの人に知ってもらうべく東奔西走します。作中で圭太の人間性を通じて職人の大変さが伝わってくる良い作品です。

また、のちの展開で稀が圭太と結婚するにあたり、稀は夢であり、やっと手にしたパティシエ稼業を辞めて、紺谷の家に入って専業主婦となり圭太を職人として支えることを選択する場面がありました。漆職人は本人だけでなく家族の協力があってこそ成り立つという考え方があったそうです。それほど気難しい職業なのですね。

このように現実でもドラマを通じてでも漆器職人の大変さ、家族の苦労はうかがい知ることができますが、何もどんどん暗い話になるわけではありません。「まれ」では圭太と稀は新しい漆職人のライフワークを確立しましたし、現実では漆職人を後援する体制も整えているのです。

例で言えば「会津漆器技術後継者訓練校」です。これは以前紹介した会津漆器を受け継ぐ人のために開かれた専門学校ですよね、先ほど申し上げました通り弟子入りは志願者にも雇用者にも結構な負担になることです。なので、専門学校という形で会津漆器を残すための門戸を広げたわけなのです。

漆業界は確かに後継者不足で先細りしているのかもしれません。日本の伝統工芸に認定しているのですから、本当は国がより力を入れて支援してくださるのが一番良いのですが、現実問題なかなか難しいものです。

若者の間では「安いものを買い、使えなくなったら捨てて別の安いもので代替する」という考えが主流になっているので、「高くても自分に合う良いものを買い、長く使えるように大切に扱う」という考えが薄れてきているのも漆業界にとっては厳しい向かい風になっています。

私たちに一番身近にできることは、お気に入りの漆器を見つけて生産者と長く付き合いを持つことであると、私は考えます。